フレミネ

CV:土岐隼一

潜水の道を極めた寡黙な少年の心は、彼が愛する童話の物語のように純粋なのである。

プロフィール

誕生日:9月24日
所属:ブーフ・ド・エテの館
神の目:氷
命ノ星座:オートマタ座
名刺:行進(こうしん)…ゼンマイバネはただグルグルと回りながら、おもちゃたちは前へ進んでいく。
紹介文:潜水の道を極めた寡黙な少年。氷のように近づきがたい外見の下に、一点の瑕もない純粋な心を秘めている。

キャラクター詳細

初めてフォンテーヌに訪れた観光客であろうと、お宝の伝説に密かに興味を抱く冒険者であろうと、美しく輝く水中世界は常に無限の魅力をもたらしてくれる。だが一般人からすると、厳しい訓練や入念な準備もなしに水中へ潜 ることは命を危険にさらすことに他ならない。水中の暗流、身体状況の急激な異変、また水の闇に潜む魔物…危険は前触れもなく突然現れるため、プロの潜水士の助けを借りることは往々にして賢明な選択と言えるだろう。
一番優秀な潜水士は誰かと人々に聞けば、ほとんどの人が「フレミネ」の名前を挙げる。太陽の光と波に洗われてすっかり小麦色に焼けたベテランですらも、その少年の腕前については話が尽きない。彼はフォンテーヌの複雑な水の流れを熟知しているだけでなく、様々な水域や季節ごとの潜水技術を身につけており、呼吸の深さを変えて自身の状態を調節することにも長けている。さらには、誰も行きたがらない海底洞窟さえも、自由自在に行き来できるという…
それを聞いた多くの人たちは機に乗じて依頼を出すが、報酬の提示額がどんなに高くとも、彼は首を横に振り、おまけに残念そうなため息をもらす。
「あいつはいつも依頼を受けてくれない*だよ…優しいんだけど、内気すぎるんだよな。」
話はいつもここで終わる。
フレミネにとって、人々の賞賛の言葉は天気のように変わりやすく、一人一人の意図を推測するのはどうにも苦手なことであった。ほんの一瞬のミスで、評価がひっくり返ったらどうしようと恐れているのだ。
逆にタイダルガやロマリタイムフラワーのような植物のほうが、彼にとっては昔からの友達であり、海に浮かぶ名声や報酬なんかよりもずっと重要な存在である。彼は水の中に潜るたび「昔からの友達」たちと密かに静かな時を過ごし、その沈黙の中で心の恐怖や不安を捨てて、人には言えない思いをすべて打ち明ける。
初めて水中に潜ったきっかけも、至ってシンプルなものであった。「水の中にいれば、雑音を遠ざけ、陸の上で起きるすべてのことから離れられるんだ。」

命ノ星座

★深海と泡沫の夢(しんかいとうたかたのゆめ)
★ペンギンと豊穣の国(ぺんぎんとほうじょうのくに)
★潜流と白い砂の歌(せんりゅうとしろいすなのうた)
★雪の月とあし笛の舞(ゆきのつきとあしぶえのまい)
★暖炉と談笑の夜(だんろとだんしょうのよる)
★目覚めと決意の刻(めざめとけついのとき)

天賦

★潜流の剣(せんりゅうのけん)
★プレッシャー・フロウ:相手の命を奪うのではなく、相手の行動を阻止する。これはある意味において、「生存」のために選んだ戦略でもある。「ペールス…次は頼んだ。」
★シャドウハンターの奇襲(しゃどうはんたーのきしゅう):「今は…余計な雑音なんて必要ない。」
★飽和潜水(ほうわせんすい)
★並流式冷却装置(へいりゅうしきれいきゃくそうち)
★深海ナビゲート(しんかいなびげーと)

神の目

その日、フレミネと何人かの子供たちは水中任務を遂行していた。今までに何度も経験してきたものと同じで、当初はすべてが順調であった。
だが突然、フレミネはある異変に気づいた。
自分の弱さを理解している生物は、往々にして危険が潜む環境においても常に集中することができる。それはフレミネも同じであった。彼は自分自身を見つめて省みる方法を知っており、自分の「呼吸」にさえ敏感になることができる。この独特な感知能力により、暗闇の中で様々な危険を知らず知らずのうちに回避してきた。
フレミネは仲間たちに「緊急帰還」の合図を送った。原因はまだ分からないが、極度の緊張感が一歩先を行き、彼の心拍数を上昇させつづける。
子供たちはそれに応じて、フレミネの周りについて水面に浮上していく。
まだ神の視線を向けられていない普通の子供たちにとって、上昇する速度はゆるやかでなければならない。しかしそれと同時に、フレミネの胸騒ぎは耳をつんざき、巨大なモヤが彼の視界を覆った。それが巨大な魚の影なのか、気を失う兆候なのかは判断がつかない。
ダイビング器材の故障だ!フレミネはふいに気づいた。自分だけ?何人が影響を受けた?
必死に大きく目を開けようとしたが、為す術もなく意識は徐々に薄れていった。
だめだ、全員を連れて戻らないと。手足に力が入る限りは…
少し眠気を感じた。
感覚が鈍くなっていくのを感じる…このままじゃ海面に浮上できないかもしれない。
…いや、戻ったとして何になる?フレミネの脳内に突然、ある考えがよぎった。来る日も来る日も同じことの繰り返し、永遠に希望の見えない生活。
もう、疲れた。自分はもう十分長く耐えてきたと思った。
こんなにたくさんの「家族」はふさわしくなかったんだ。彼らとの間には温もりや感情のやり取りなどなく、この「家」の中ではただ髪の色や型番の異なるクロックワーク人形に過ぎなかったのだ。
はっきりとは分からないが、彼にとって「海の水」こそが帰るべき場所であると感じた。このまま永遠の眠りにつくのも悪くない…彼はゆっくりと目を閉じた。
すると突然、ある声に呼び覚まされた。「フレミネ、フレミネ…」――その声はゆっくりと、厳かに遠い世界の向こうから聞こえてきて、ちょっとだけ、どもっている。
ペールス?
フレミネは真っ白な場所に向かって両手を広げ、怪訝に思いながら両目を開いた。
水の底には「ペールス」という名前のペンギンはおらず、子供たちは全員失神している。
全員を救出しないと!フレミネは心の中で叫んだ。互いに心が通じ合わないからって何だというんだ?ぼくは家族を誰一人として見捨てない!この先、どんな暗礁にぶつかろうとも、命をかけられる勇気があってはじめて、暴雨が止んだ後の晴れ間を目にするチャンスは巡ってくる。
その瞬間、体に力がみなぎったように感じ、呼吸も楽になった。彼は急いで溺れた仲間たちのところへ泳いでいった…
暴風雨の中、彼は奇跡的に子供たち全員を救出した。まるでおとぎ話に出てくる「ペールス」と同じ英雄のようであった。
そのとき、彼は冷たく光る水晶のように透き通った「神の目」が、自分の潜水服にぶら下がっていることに初めて気づいた。
しかし、フレミネはこの出来事を誰にも話していない――英雄がその名を残すために英雄になるわけではないように。

ストーリー

キャラクターストーリー1

「神の目」をまだ手にしていなかった頃から、すでにフレミネはダイビング用のヘルメットをかぶり、ペンギンのように水域の中を自由自在に泳ぎ回っていた。
フレミネは小さい頃から人と話すのが得意ではなく、嫌なことがあるといつも深い海の底に飛び込み、不安や悶々とした気持ちを陸の上に置いてきた。時が経つにつれ、静かな海底は彼が身を落ち着ける「ゆりかご」になっていった。樹木の年輪が外に向かって広がり続けるように、その海底探検も年々と円を描くように広がった。彼は全身で海流を感じ取り、呼吸をするたびに海水と親しくなっていった。そうして、彼は新しい家の周りにある道を覚えていくように、フォンテーヌの水の流れや状態といった特性を頭の中に刻み込んだ――フレミネにとって、それは後者のほうがずっと楽しいことであった。後に彼は一番のお気に入りの場所を発見し、そこに小さな水中の秘密基地を作って、内に沈んだ感情をルエトワールと同じような色の光にして輝かせた。
それ以来、解決できない問題に直面すると、フレミネはそのすべてを包み込んでくれる広大で深い紺碧に包まれた、自分だけの避難場所にこもるようになった。
自由、静寂、安心感、心地よさ…もしフレミネの水中世界に対する評価を他の人が聞いたら、ほとんどの人が眉をひそめるだろう。
しかし、フレミネが他人とその気持ちを共有することはない。なぜなら、そこは彼だけの場所だからだ。その想いは、彼の心の内に秘められたままである――深海に眠る宝物のように。

キャラクターストーリー2

傍から見ると、フレミネは存在感が薄く、性格が悲観的と言えるくらい冷淡な少年だ。いつも独りで音もなく行動し、同年代の子たちともまったく打ち解ける様子がない。あの誰もが注目する大魔術師リネの弟であるフレミネの存在は、じきに忘れ去られる古びた首飾りのように「陰り」を帯びていた。 だが、彼自身はそんなことをまったく気にしていないようだ。
ずっと前から、フレミネは余計な感情を削ぎ落とし、外からの圧力に揺らいだり、自分の心が影響を受けたりしないよう努めてきた。
自分の周りに「氷のブロック」をどんどん積み上げ、そのキラキラと透き通る小屋の中にうずくまり、膝を抱えておとぎ話の本にわずかな慰めを求めた。
彼にとって、海に潜ることが一時の安らぎを求めるものなら、氷の壁を築き上げることはしばしの温もりを得るための行為だ。
フレミネの心に築かれた氷の小屋には、ほんの一握りの「家族」だけが招待される。ただ、それでも事前に部屋はきれいに片付けられ、おとぎ話の本にはしっかりと鍵がかけられた。
外出ともなれば、彼は精密で物言わぬクロックワーク人形のようになった。
彼は、かつて危険も顧みずに波の上で仰向けになったことがある。紫金オオズグロカモメたちがその上で歌い始めたが、幸いにも彼らがフレミネを魚と勘違いすることはなく、飲み込まれはしなかった。
波に身を任せて漂うのは、とても簡単なことだと思った。
相手が誰であろうと、どんな要求が出されようと相手の命令を従順に聞き入れ、何の疑いも持たず、結果がどうなろうとも実行に移し――それを漁の成果のように持ち帰る。そうしていれば、叱責や罰を受けることはない。
普通の家の子供たちが元気に走り回って最新のクロックワーク玩具を自慢したり、 「スチームバード」の話し方を真似したりしている間に、フレミネの心は次第に麻痺していった。「命令」が彼の心の空洞を満たし、彼が背負う「ゼンマイ」となったのだ。
いっそのこと、本当に冷たくて残酷な機械になってしまえば、任務のこと以外は何も考えなくていいのに…と考えたことさえあった。しかし成長するにつれ、自分の心が脆いことを自覚していった。本当は感情を削ぎ落としてしまいたいのに、手放せない感情があまりに多すぎる…深夜になると、それらが突然水草のように纏わりつくのだ。彼は今でも難しい問題を避けるクセがあり、任務が失敗するんじゃないか、 自信のなさが他人を不快にさせるんじゃないかと常に恐れている。他人――とりわけ大事な人たちを失望させたくないのだ…
彼は優秀な子供ではないが、成長の途中であまりに繊細になりすぎてしまった。
分厚い殻に閉じこもり、気持ちを伝えることにますます臆病になり、ただただ海の中で砂を吐くだけになっている。

キャラクターストーリー3

フレミネは、フォンテーヌ廷の「サーンドル河」地区で生まれた。窓の外から聞こえる隣人の怒鳴り声が彼の目覚ましで、夜に酔っ払いが口ずさむ歌が彼の子守唄だった。
フレミネは自分の父親の顔を知らない。母親の口からは、ただ借金をたくさん作ってしまったのだと聞かされていた。その数字が理解できる概念を超えていたため、幼いフレミネにとってそれはパレ・メルモニアの晩餐と同じくらい想像もつかないものだった。ただ母親が毎朝早くに家を出て、遅くに帰ってくるのはそのせいだということは彼にも理解できた。
独りで家にいるとき、フレミネは静かに室内にある壊れたランプや掛け時計などの数少ない機械をいじって遊んだ。
これらは彼が物心ついた頃からずっと家にあったという。まるで歩き疲れて休んでいる客人のようにも見えたが、動き出すことはなかった。そこでフレミネは自ら工具を探し出し、それらを一つ一つ慎重に分解していった。精密な機械の内部構造は、彼の目には不思議な迷宮のように映った。ここを回すとそっちが動く…ここを触ると何かが飛び出す…
機械の仕掛けをいじっていると、フレミネはまるでおとぎ話に出てくる魔法の薬を飲んだみたいに、体がそれらのパーツと同じ大きさになったような気がした。ギアやクロックワークの世界をさまよっていると、時が経つのも忘れてしまう。彼の孤独な日々は、それらの寡黙で楽しい友達との時間で満たされた。
ある日、母親が帰ってくると、何かの音を聞いて突然足を止めた。それは、フレミネが知らないうちに直していた時計の音。フレミネの横で「チクタク」と秒針が鳴り響き、生まれ変わったことを祝っていた。母親がフレミネの頭を撫でて褒めてあげると、彼はにっこりと喜んだ。翌朝、彼が目覚めると掛け時計は消えていた。母親は帰宅すると、普段は買ってこないようなパンを二つフレミネにあげた――その味は今でも覚えている。
それからというもの、母親は頻繁に壊れた機械を持って帰ってきた。ある時はクロックワーク玩具、ある時は小型の時計…フレミネはその新しい友達が大好きで、 彼らを眠りから目覚めさせるのに多くの時間を費やした…目覚めた翌日には、彼のそばからいなくなってしまったが…
あるとき、フレミネは帰ってきた母親に興奮して駆け寄り、持っていたものを手渡した。それは親指くらいの大きさで、精巧な作りをしたオルゴールのペンダント。母親がそれを道端で拾ったときは、ひどくボロボロでとても音楽が流れるようには見えなかった。
心地よいメロディーが二人の間に鳴り響く――フレミネの純真な顔を見つめた母は、めったに見せない笑顔を見せた。
このペンダントだけはフレミネのもとを去ることはなく、毎晩母親が彼の首元からそっと外し、二人に安眠のための曲を聞かせてくれた。

キャラクターストーリー4

ある日、母親がフレミネの手を引いて何も言わずに道を急いだ。母親の後ろを歩く幼いフレミネは、きつく握られた手が痛くなった。
「母さん、どこに行くの?」とそう聞いても、母親は何も答えない。
「母さん、どうして泣いてるの?」再びそう聞くと、母親は突然足を止めて嗚咽を漏らしたが、それもほんの一瞬だった。
その後、まるで冷たくて暗い海の底に飛び込む決意をしたかのように、深呼吸してフレミネの手を引いて歩き出した。母親は一滴の涙も流さなかったが、フレミネはこの静かで重苦しい感情の中に不吉な暗流があり、未来という暗礁に突き当たっているのを漠然と感じた。
フレミネは見知らぬ建物の扉の前に連れてこられた。耳障りな「ギィッ」という音と共に開かれる重厚な扉。この扉は、一度閉じたらもう二度と開かれない扉だと悟った。
相変わらず母親は何も言わないままで、その表情と心は底の見えない海に沈んでいた。
「あんたがフレミネだね?」と、扉の中から一人の女性が出てきて「ついてきて。」と言った。
フレミネはよく分からずに母親の顔を見たが、暗流がさらに激しく渦巻いていくのを感じた。
「院長」と名乗る女性はフレミネのもう一方の手を引き、扉の中へと引き入れようとした。
突然、母親の握る手が、道を急いでいたときよりも強く力んだ。どちらもフレミネの手を放そうとせず、彼は二つの異なる波に引っ張られる小舟のように自由を奪われてグラグラと揺れた。
すると母親はゆっくりとしゃがみ込み、フレミネの前で片膝立ちになった。それは、普段母親がフレミネを一人家に残していくときにする動作だ。「いい子にするのよ。」と母親は言って、いつものようにフレミネの額にキスをした。
この優しい言葉が鋭い岩礁の前に立ちはだかり、激しくうねる暗流をふいに穏やかな暖流に変えた。
なんだ、そうだったのか――フレミネはそのとき思った。もしかしたらいつもと同じで、ほんの短い間のお別れなのかもしれない。
彼は安心させるつもりで頷いた。
「院長」は再びフレミネを中に入れようとする。今度は母親も引き止めることなく、フレミネの腕をそっと放した…
フレミネはずっと、いい子にして言うことを聞いていれば、いつか母親が迎えに来てくれると思っていた。重い扉によって隔てられた母親の優しい顔は、きっといつか再び自分の前に現れる。そしたらぼくの前髪を持ち上げて、ご褒美に額にキスをしてくれるんだ――
でも、そんな日は訪れなかった。
「まだ事実が分かってないのか?あんたは借金返済のために売られたんだよ。」
フレミネは大きくなっていくにつれて、母親の行方と自分の運命について疑問を抱き始めた。勇気を出して院長に問うと、返ってきたのはあまりにも冷ややかな返答だった。
「あんたは捨てられた子。あんたが帰るべき唯一の場所はここなのさ。」「命令に従わなければ、母親はどうなっちまうだろうね…」――前院長の言葉はトゲの付いた足かせのようなもので、フレミネの希望を永遠に扉の中に閉じ込めてしまった。 この目に見えない束縛は、フレミネの身に劣等感を刻み込んだ。あの日々の中で、 彼の救いは深い海の底だけ…
冷たい海水が自分の身を圧迫すると、彼は母親をより身近に感じることができた。当時の母親の心も、こんな風に深い海の底に沈んでいたように見えたからだ。それはフレミネが潜ったことのあるどんな場所よりも冷たかった。

キャラクターストーリー5

前院長が「お父様」に代わった後、フレミネは母親の行方を探す考えを再び持ち始めた。
当初、彼は「お父様」が過激な手段を持っている以上、そんなことをすれば余計に残酷な嵐を巻き起こし、これまでと同じように無情な言葉で彼らに新たな命令を下すだろうと思っていた。しかしすぐに「お父様」のやり方は前院長と天地の差があることに気づいた。
「家」は子供たちにとって安らげる場所であり、全員が協力して守っていく必要がある。「任務」を達成する方法は自分で選択でき、仮に失敗しても以前ほど痛ましい罰は与えられなかった…
自由な空気によって、フレミネは呼吸が楽になり、余った時間を利用して母親の行方を探し始めた。
だが長い時間をかけても、母親の消息はつかめなかった。
もしかしたら、ぼくは本当に捨てられてしまったのかも…フレミネは記憶の中からもはや曖昧になった母親の顔を思い出し、現実を受け入れるよう自分に言い聞かせた。
フレミネが完全に諦めようとしていたとき、「お父様」 が突然彼にペンダントを手渡した。
「あのクズの拠点で見つけたものだ。とっておくといい。」と父親は言った。
フレミネは困惑した表情で彼女を見たが、かえって相手に疑問を持たせてしまった。
「どうした?高利貸しのクズのことだぞ。そして、これは君の母親の…」 彼女は眉をひそめ、何かに気づいたようだった。「フレミネ、母親のことだが…どう聞かされていた?」
フレミネは、自分は捨てられたと前院長に言われたことを伝えた。そのあいだ相手は何も言わなかったが、目には密かな怒りの炎が込み上がっていた。
「…真実を知りたいか?」フレミネの言葉を聞き終えると、彼女は珍しくしばらく黙り込んで、鋭い目つきでフレミネを見ながら言った。
フレミネは無意識のうちに頷いた。ただ聞き終わった後、自分が信じたいのはどちらの話なのか、よく分からなくなっていた。
「お父様」は、フレミネの母親は彼を捨てたのではなく、逆に守ったのだと語ったのだ…
あの当時、フレミネの家が背負った借金はついに返済不可能な額にまで達していた。すると貪欲な高利貸しは、フレミネと母親の家を差し押さえただけでなく、フレミネ自身を借金の返済に充てようとしたのだ。母親として、そのような所業を黙って見ていられるはずもない。結局、彼女に残された選択はただひとつ――フレミネを「あの孤児院」に預けて高利貸しを近づけないようにし、その代わり自分がすべてを受け入れるということだった。
「私が見つけたのはこれだけだ。君の母親はというと…」――目の前でペンダントを握りしめる少年を見て、「お父様」はそれ以上何も言わず、沈黙でその言葉の続きを補った。
フレミネは顔を上げようとしなかったが、「お父様」は彼の性格をよく知っていた。震えながら手にあるペンダントを見つめるフレミネを残し、静かに部屋を出たのであった。ペンダントはあちこち錆びだらけになり、音も出ない。クロックワークでさえも乾いた血痕によって深い褐色に染まっていた。母親は最後の瞬間も、きっとこれを握っていたんだろう。フレミネは、絶望に打ちひしがれながらペンダントからたとえ僅かであっても母親のぬくもりを探そうとした…
その夜、フレミネは海の底で泣きじゃくった。こんな風に泣いたのは久しぶりだ。大きな泣き声は海水の流れに埋もれ、彼のために一緒に涙を流すロマリタイムフラワーを除いて、誰もその泣き声を聞かなかっただろう。
それから彼は手に持つ巨大な剣をより強く握り締め、自分の「家族」を二度と不幸な目に遭わせないと密かに心に誓った。

「雪羽ガン童話集」(「ゆきはねがんどうわしゅう」)

フレミネは小さい頃から童話が好きだった。
現実とは異なり、絵本の中の小さな世界はいつもカラフルで華やかなもの。キャンディで出来たお城、バブルオレンジの果汁が流れる川、言葉を話せる水晶蝶、赤カンムリガラとぬいぐるみが一番の友達だ…
両目を閉じて深呼吸してから本のページをめくると…フレミネはおとぎ話の世界の不思議な洞窟へと潜り、文字と想像力を頼りにその境界を拡げていった。
彼は途中に散らばった言葉、もしくは端っこにある小さな挿絵を拾い上げては、腕に抱えてじっくり考えた。数々の素材が色とりどりの光を反射させ、質感の異なる反響をいくつも届け、読むたびに新たな収穫をくれた。
……
彼が孤独を感じたときは、『ペンギンのペールス』が白黒の羽をばたつかせ、まんまるのお腹をスケートボード代わりにして氷の上をヒュッと滑って海に飛び込み、釣りで競争しようと誘っ てくれた。
彼に勇気がないときは、ピンクの長い髪をした『マルコット草の姫』が遠く窓越しに彼を見つめてくれた。お姫様がまだ種だった頃、カニのハサミに乗って海を渡り、理想の暮らしを求めて故郷を離れたことも知っていた…
彼が苦しんだり悩んだりしているときは、一緒に壮大な冒険に出てくれた『 ミスター・フォックスとクロックワーク警備ロボ』が彼の両隣にいてくれた。ミスター・フォックスの大きな尻尾でカーペットのほこりが舞い上がると警備ロボは鼻をムズムズさせたが、彼は顔色ひとつ変えずにまっすぐ立っていた。「試練はすべての人に訪れる。」と彼らは言う。「負けを認めるな、キミは強い子なんだ。」
……
少年と呼べるくらいの年頃になっても、フレミネはその世界を忘れようとしなかった。
彼は素敵なお話や本の中で知り合った友達の存在を信じている。
フレミネの心の中では、彼らは本当に夢や詩のような世界で暮らしているのだ。そこでは心配事も悩みも存在せず、一日中笑い声が響いている。そこではどんな願い事も叶い、正義は果たされる…
ただ、その世界は実際には触れられない――いや、もしくはしばしの間、触れられないだけなのかもしれない。

キャラクター関連

挨拶

●初めまして…:こんにちは、ぼくはフレミネ。潜水士をやってる…あっ、握手は別に…えっと、ぼくが言いたいのは、そんなに気を遣わなくてもいいってことで…コホン、水の中の遺跡を調査したり素材を引き揚げたりしたい時、ぼくは役に立てると思う…でも他のことに関する命令だったら、あなたを失望させちゃうかも…
●世間話・海底:誰もいない海底へ行きたい、一人で静かに過ごしたい…
●世間話・原理:機械装置の構造と原理さえ分かっていれば、故障は特定できる…けど一人の人間を理解するとなると、これよりも遥かに難しい。
●世間話・家:どこを漂流していようと、あの場所の火が灯っている限り、ぼくにはまだ帰る場所があるんだ…
●雨の日…:雨が降るたびに、気分も重く沈むんだ…
●雷の日…:ペールス、ぼくが守ってあげるから、怖がることはないよ。
●雪の日…:潜水用ヘルメットをかぶって…寒さ対策したほうがいいかな…
●雨上がり…:雨が止んだ?うん、よかった。
●暴風の日…:海に潜っていたい。
●おはよう…:おはよう。その…ぼくの手が必要な任務はある?もしなければ出かけるね。
●こんにちは…:機械内部に故障はあるかな…クロックワークが老化してるっぽい?うん、これなら簡単に修理できるはず…あっ、ごめん、ぼく…えっと…さっき何か言った?
●こんばんは…:海鮮スープを一杯どう?捕ったばかりのエビと貝で作ったんだ。ぼく、料理はあまり得意じゃないけど食材が新鮮だから、味も…そこそこのはず。
●おやすみ…:先に休んでて、ぼくはもう少し本を読んでから寝るよ。えっ?何の本かって?これは…えっと、ダ、ダイビング関連の本だよ。学ばなきゃいけない技術がたくさんあるから…とにかく、おやすみなさい!
●誕生日…:ぼくと一緒にお出かけしない?景色がすごく綺麗で、まるで本に描かれた世界のような幻想的な水域を知ってるんだ。そこにはぼくの秘密基地があって、ピカピカと光る海洋生物を何匹か飼ってる…あなたと一緒に、いつもとは違う誕生日を過ごせたらなって…それで最後に、お祝いの言葉をあなたに贈るんだ…えっと、この機会をぼくにくれる?

自己紹介

●自身について・ダイビング:知っての通り、ぼくの数少ない特技のひとつがダイビングだよ。タイダルガと付き合うほうが、人と会話するよりもずっと経験豊富なんだ。だって、あれらはなじってくることがないし、失望した顔も見せず、静かにただ一緒に漂ってくれるからね…水の中の世界は、陸の上の世界よりもずっとシンプルなんだ。
●自身について・クロックワークペンギン:孤独を感じる夜に、ペールスはいつもぼくに付き添ってくれる。それってとても大切なことだと思うんだ。だから、他の子供たちにも一緒にいてくれるおもちゃの仲間が必要なんじゃないかって考えた、そこでクロックワークペンギンをたくさん作って、レシュッツのクロックワーク工房に置いて売ってもらったんだ…評判は悪くなかったけど、売れ行きはいまいちだったよ。購入するのも大人のほうが多くて…はぁ。
●命令について…:「命令」はぼくの背中にあるゼンマイみたいなもの。それがないと、むしろ慣れないんだ。ぼくへの指示がどんなものであろうと、何も遠慮はしないで。
●仲間について…:あなたのこと、もっと教えて。あなたの趣味、好きな食べ物、好きな色、飼いたい動物…あなたがぼくの「仲間」である以上、ぼくたちの関係はクロックワークとマシナリーの関係よりも強固な繋がりがあるはずだから。
●「神の目」について…:「神の目」を持つようになってから、ダイビングの時にヘルメットをかぶる必要がなくなったんだ。でも、ヘルメットを捨てるつもりはないよ。これはぼくを外のいざこざから遠ざけて、安心感を与えてくれるものだから。「神の目」、ヘルメット…それにペールス、ぼくの呼吸は、常にこれらから力をもらってるんだ。
●シェアしたいこと…:海から空を眺めると、太陽の光もそれほど眩しくなくなるんだ。だからこそ、ぼくはずっと水の中にいたい。
●興味のあること・蒼晶螺:水の中で蒼晶螺の化石をたくさん見たことがある。その精巧な模様を見つめてると、つい時間を忘れてしまうんだ。これほど美しい生き物でさえ化石になったのなら、ぼくたちの周りの景色もいずれ海の底に沈んでしまうんじゃないかな?
●興味のあること・ルエトワール:ルエトワールは常に何かにくっついてる。時には岩礁、また時には波止場…そして、一番よく見かけるのは水中の巨大な建築群の中。ルエトワールって光を追うホタルみたいに、人間に憧れてるんじゃないかって思うんだけど、あなたはどう思う?
●フレミネを知る・1:ご、ごめんなさい。ぼくに関する面白い話題が何も思いつかなくって…仮に言ったとしても興ざめしちゃうと思う…
●フレミネを知る・2:ぼくの顔を見ないか、ヘルメットをかぶることを許可してくれたら…お話ししてもいい、かな。その…心の根っこの部分が原因の一つではあるんだけど…それよりも大きな理由があって…たぶん、自分の過去を振り返らないことにぼくが慣れてしまってるせいなんだと思う…
●フレミネを知る・3:本によると、人は死んだらお星さまになって、この世界を見守ってくれるんだって…ぼくは本当の父さんが嫌い。ぼくと母さんを捨てた人だから、あの人がどうなろうとぼくは気にしない…でも、もし自分が命を懸けて守ってきた子供がこんなにも臆病で、他人の屋根の下にこれだけ長く隠れてもなお、一人前になれてないことをお星さまになった母さんが知ったら、ぼくに…失望するかな?
●フレミネを知る・4:前任の院長が管理してた頃の「家」のことは、あまり思い出したくない。ただ一つ言えるのは…ぼくが海の中に隠れてしまうクセは、あの頃にできたものだってこと…でも「お父様」はそんなぼくを変え、そして「家」に対する考え方も変えてくれた…それから、リネとリネットがぼくたちの「家族」に加わって…ぼくは初めて、心置きなく話せる仲間と出会えたんだ。
●フレミネを知る・5:ぼくは誓ったんだ――何があろうと今のこの家を守り抜いて、一歩も退かないことを。これはもう前任の院長の命令とか、「お父様」の期待に応えたいからとかじゃない…ぼく自身の望み。だから、この「家」の秘密を誰にも言わないで…あとぼくの望みも内緒にしておいてほしい。
●趣味:ダイビング以外にも、ぼくは機械の分解と改造が好きなんだ。たまに集めてきた材料を組み合わせて、新しいクロックワーク玩具を作ることもあるよ。ペールス?うん、あの子はどちらかというとぼくの家族かな。ぼくと一緒に成長してきたんだ…ほんとだよ。ぼくはずっとあの子に新しい機能をどんどん追加してる…いつか、あの子が自由に空を飛べるようになったらいいな。
●悩み:…これについては、どう答えたらいいかな。すぐに解決すべき問題はないって言えるし、逆に山ほどの問題を抱えてるとも言える。もし自分を店のショーウィンドウに並ぶクロックワーク人形に見立てたら、どこから修理したらいいのかぼくにも見当がつかない…ただ結局、どの問題もある一つの原因に帰結するんだ…つまり、ぼくが弱すぎるってことだよ。
●好きな食べ物:魚やエビといった海鮮類が好き…あとカニも。リネやリネットたちと食べ物の好みが似てて、すごく嬉しいんだ。だって、これならみんな一緒の食卓を囲めるでしょ…調理方法については、みんなに合わせるよ。
●嫌いな食べ物:コーヒーはあまり飲めない。コップの半分以上を飲むとすぐに心臓の鼓動が速くなって、呼吸も乱れるんだ。コーヒーは頭をすっきりさせる効果があるってみんなよく言うけど、ぼくからするとただ苦しみを与えるだけのものだよ…
●突破した感想・起:本当に…いいの?
●突破した感想・承:ぼくのためにこんなことしなくても、あなたに従うのに。
●突破した感想・転:あなたの時間とエネルギーはとても貴重だから、他の人たちに使った方がいい…と思う。
●突破した感想・結:あなたから受けた恩をどう返したらいいのかな。この気持ちを、どう表現したら十分伝わるんだろう…その…ぼく、他愛もない会話とか不慣れだから、何か間違ったことを言っちゃわないかすごく心配なんだ…あなたを不快にさせたり、後悔させたりしたらどうしようって…ごめん、何も言わず、ただ少しの間あなたの隣にいてもいい?

関連キャラクター

★「お父様」(アルレッキーノ):涙…「お父様」はぼくたちが泣くのを嫌がる、涙は感性と軟弱さを混ぜ合わせた物だって。「お父様」に叱られるたび、ぼくはいつも水の中に入るまで泣くのをガマンした。幸い、ロマリタイムフラワーがいつもぼくに寄り添ってくれてたよ。

教え…子供の頃、ぼくはこう教わった――家のためなら、命を捧げるべきだと。けど、「お父様」が権力を握ってからは、この「教え」に変化があった。ぼくたち一人ひとりがかけがえのない存在で、自分の命を大切にすべきだって。そして持てる限りの力を尽くして、この世界で自立できるようになれって、「お父様」は教えてくれた…正直に言うと、これって単純な命令に従うよりもずっと難しいんだけどね…

★クロリンデ

★シャルロット:どうしてか分からないけど、シャルロットさんはぼくがごく普通の潜水士だってことを信じてくれないんだ。それどころか、ぼくの出自には記事にすべき「特ダネ」が隠されてるって思ってるみたい…ぼくが嘘をついた時、自然に振る舞えなかったからかな?

★シュヴルーズ:シュヴルーズさんはよくボーモント工房に行って、銃に使う高価な精密パーツを買ってるみたい。ぼくがもっとモラを稼げれば、ペールスに今より性能のいいパーツを買ってあげられるのに。

★ナヴィア:リネから事件の経緯を聞いたよ。あなたとナヴィアさんが熱心に捜査してくれたおかげだってね、本当にありがとう。ぼくの代わりに、ナヴィアさんにもお礼を伝えてくれないかな…えっ?直接お礼を言うべきだって?ぼ、ぼくは…うぅ、急にお腹が痛くなってきた…ごめん、先に失礼するね。

★ヌヴィレット:ある日、ぼくが海面に浮かび上がると、ちょうど最高審判官様が一人で海辺に立ってるところに出くわしたことがある。たぶん、何か考えごとをしてたか、風景を見てたんだと思う…もちろん、ぼくは話しかけなかったよ。ちらっと目を合わせただけで、すぐに海の中に戻った…今思うと、何だか失礼なことをしちゃったかも…はぁ。

★フリーナ:回避…す…水神さまを客観的に評価するなんて、ぼ、ぼくには無理だから。うん…この話題はやめよう。それに、ぼくはあの方とあまり関わったことないし…見方も偏っちゃうと思う。

判断…えっと、どうしてもっていうなら、水神様が観客としてそこにいる姿を見たことがあるよ。あの方は話してる時の姿がとても印象的だけど、逆に黙ってる時は何か意味深な表情をしてる気がする…あの目は、まるで光の届かない海底みたいなんだ。何か深い秘密を隠していて、他人に触れられるのを怖がってるような…ご、ごめん…ただの憶測だから。

★リネ:パフォーマンス…家にいる時、リネはよくぼくにちょっとしたマジックを披露してくれるんだ。ぼくを笑わせられると、リネはすごく喜んで「このマジックなら観客のみんなを満足させられるはずだ」って言う…ぼくって、普段そんなに笑わないのかな?

仮面…リネはぼくたちのチームのリーダーで、いつもみんなのお兄さんとして振る舞ってる…でも、リネは無理してるってぼくは気付いたんだ。だから、たまには仮面を外したほうがいいよって言ったんだけど…それを認めないどころか、ケンカにまでなって…その一件があって以来、ぼくはその話題に触れないようにしてるんだ。

→僕のウブな弟は、未だに童話を信じてる。まったく、羨ましい限りさ。あっ、これは彼から聞いたんじゃないよ。ある日、彼がこっそり引き出しにしまってるものをうっかり見ちゃってね…本当にうっかりだから!絶対内緒にしてよ。じゃないと、怒らせちゃうだろうから。

★リネット:同じ任務をリネかリネットにやらせると、いつだって完璧にこなす。でも、ぼくがやると上手くいかないんだ。リネットはよく、急に故障する家の機械は全部ぼくが修理してくれてる、だからみんなそれぞれ長所があるんだって慰めてくれるけど…はぁ、修理みたいに他のことも上手にできたらいいのに。

→繊細で優しい子だけど、自分を卑下するのが好きみたい…過去の経験と関係してるのかも。時々、彼から伝わる雰囲気がリネとはまるで正反対に感じることがある…どっちも私の家族だから、意見が分かれた時は私が責任を持って橋渡ししてるの。