医者のアネモネ(いしゃのあねもね):貴重な素材だったが、長い間放置されて薬としての価値を失った。
…大地を旅する放浪医師。冒険者への情熱を持ち様々な希少素材を探していた。
彼女は険しい山で、ある湿った岩の隙間に咲いたこの銀蓮を見つけた。
結局、薬として使われることはなかったが、花の香りはずっと彼女を励ました。
医者の梟の羽根(いしゃのふくろうのはね):夜行性猛禽の硬い羽根。夜に仕事する時はそれを見て自分を励ます。
…自分の指さえ見えない深夜にでも、放浪医は仕事に行かなければならなかった。
暗い夜には無数の危険が隠されている。よって通行人は梟のように常に注意しなければならなかった。
梟の終わらない見張りのように、疲れ果てた放浪医はついぞ倒れた。
医者の懐中時計(いしゃのかいちゅうどけい):時間を測るための道具。医者は、1秒でも無駄にしたくない。
…生死の境を彷徨う患者を助ける時は、放浪医は一分一秒を争わなければならなかった。
懐中時計は非常に正確で、救命処置において重要な役割を果たした。
晩年の彼女は病床に伏せて、周りにあるのはカチカチと鳴る懐中時計だけであった。
一命を取り留めたことを知らせる道具は、最期の哀歌を歌い出した。
医者の薬壺(いしゃのくすりつぼ):精錬後の薬でいっぱいだった壺も、今は濃い薬のにおいしか残っていない。
…濃い目の薬湯はもう乾いたが、苦い臭みは消えない。
放浪医はこの苦すぎる薬湯でたくさんの患者を救った。
しかし彼女自身が病気になった時、彼女を診たのはかまどに置いてある薬壺だけだった。
医者の方巾(いしゃのほうきん):普段は乱れた髪を束ねる。緊急時は捻挫、骨折した腕の固定にも使える。
…住所の定まらない日々、放浪医は毎日忙しく仕事に向かっていた。
晴れの日でも大雨の日でも彼女は止まることなく使命を果たした。
彼女の山野草のような髪を守ったり、ガーゼを巻く包帯としても使われたりした。
放浪医のハンカチは彼女と共に風雨を経験してきた。彼女の旅において最も忠実な仲間である。